相続税の基礎知識
相続税の概要
相続税は,相続があったことにより,その相続に基づいて取得した財産の価額を課税標準として,その取得者に対して課する財産税です。すなわち,その概要は,次のようになっております。
① 納税義務者は,相続又は遺贈(死因贈与を含む)により財産を取得した者です。
- 死因贈与というのは,死んだならば贈与するという契約をいいます。なお,財産には,原則として土地・建物・有価証券・その他すべての財産が含まれます。
② 課税価格は相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額となっております。
③ 課税最低限,つまり,基礎控除として5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)となっています。したがって,仮に法定相続人の数が3人とすれば8,000万円となります。
〔注〕 法定相続人の数に含まれる養子の数は,実子がいる場合は1人,実子がいない場合は2人までと規定されております。
④ 税率は,次のようになっています。
- 課税最低限の金額を超える部分の遺産額(債務控除の適用がある場合には,その控除後の価額)を法定相続人の数に算入される者が民法の法定相続分の割合に従って相続したものとした場合の各取得分の価額に対し,その取得分につき1,000万円以下の部分に対する10%から3億円超の部分に対する50%までの超過累進税率を適用して相続税の総額を求めます。
- 上記の相続税の総額を,各相続人及び受遺者の課税価格によりあん分した額をもって,それぞれの者の納付すべき相続税額とします。
⑤ 相続税は,次のような控除があります。
(ⅰ) 債務控除
- 被相続人の債務(公租公課を含む。)及び葬式費用
(ⅱ) 税額控除
- 相続税の対象となる遺産額に含まれる贈与財産につき納付済みの贈与税額を控除
- 被相続人の配偶者については,当該配偶者の法定相続分相当額(その額が1億6,000万円未満である場合には1億6,000万円)に対応する税額を控除
- 未成年者については,20歳に達するまでの年数各1年につき6万円を控除
- 障害者については,85歳に達するまでの年数各1年につき6万円(特別障害者については12万円)を控除
- 10年以内に2回以上相続(相次相続)が開始した場合には,原則として,前回の相続税額の10%に,10年からその時までの経過年数を控除した年数を乗じた額を控除
- 外国所在財産につき納付済みの相続税額を控除
(ⅲ) 税額加算
- 相続人が被相続人の配偶者及び一親等の血族以外の者であるときは20%加算
⑥ 生命保険金等については,次のように計算します。
- 被相続人の死亡により相続人その他の者が取得した生命保険金(損害保険の死亡保険金を含む。)で,被相続人が負担した保険料に対応する部分については,保険金受取人が相続又は遺贈により取得したものとみなされます(相続人の取得した生命保険金の非課税限度額は,500万円×法定相続人の数である。)。
- 相続開始の時にまだ保険事故が発生していない生命保険契約で被相続人が保険料を負担し,かつ,被相続人以外の者が契約者であるときは,当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保険料に対応する部分は当該契約者が相続又は遺贈により取得したものとみなされます。
具体的な計算事例
事例の財産20,000万円に対しては,種々の条件が必要となるが,法定相続人が配偶者及び子2人とすれば基本的(相続税の総額)には一応次のようになる。
20,000万円-(5,000万円+1,000万円×3人)=12,000万円
12000万円1 2 =6000万円 (配偶者)
12000万円1 2 1 2 =3000万円 (子1人)
6,000万円×30%-700万円=1,100万円 (配偶者分)
3,000万円×15%-50万円=400万円 (子1人分)
1,100万円+400万円×2人=1,900万円
ただし,配偶者の税額軽減(税額控除)があるので,配偶者が法定相続分どおり財産を取得すれば,各人の相続税額は,次のようになります。
配偶者 0万円
子(2人分) 950万円
この場合の配偶者の軽減税額は,算出相続税額と同額となるから950万円が免除されることになります。
1900万円10000万円 20000万円 =950万円………配偶者の分
950万円1 2 =475万円………子1人の分
なお,仮に財産の全額を配偶者が取得すれば法定相続分を超える部分に対応する相続税を納付することになります。