会社を取り巻く税金の基礎知識
1.個人と会社どちらが得か?
法人化のメリット・デメリットは「法人設立」のページで解説しましたので、、ここでは、税金に重点をおいて説明しましょう。重複する場合もありますが、御容赦ください。
さて、法人化のメリットの第一として、節税がよく言われます。本当に節税になるのでしょうか。
まずは、税率はどうでしょうか。
個人事業での税率表(所得税)をみると、5%から40%までの6段階となっています。会社の場合には、法人税が課されますが、一般的な同族中小法人の場合、年間の利益が800万円までが18%で、800万円を超えた部分については30%の2段階しかありません。
即ち、利益が少ないうちは個人の所得税のほうが安くなりますが、事業が拡大し、所得税の税率が法人税率を上回ってくると、確かに会社のほうが有利になることは理解できると思います。なお、正確には、会社には法人税のほか住民税、事業税がかりますので、損益分岐点を正確に算定するのは容易ではありません。目安として、所得が毎年1,000万円を経常的にこえるようでしたら、法人化を考えたほうがよいと思われます。
次に、給与所得控除の件ですね。これも、法人設立の箇所で説明しましたが、再度、触れておきます。
会社の場合、自分への給与支給額(役員報酬)は、その全額を会社の収益から費用として差し引くことができます。そして、給与への所得課税は、法律が定めた給与所得控除という経費をさらに差引いた残額に対して行われますので、最終的には、会社で経費となり、個人でも一定の経費を控除できるわけです。これが、いわゆる二重控除の問題ですね。所得区分が変わることにより、全くかかっていない経費が新たに創造され、節税が可能となるわけです。そこで、税務ではこの二重控除の問題を解消するために、一定の条件に該当する役員の給与については費用と認めない措置を、一旦平成18年税制改正でとりましたが、平成22年の税制改正では、平成22年4月1日から終了する事業年度から廃止ということになりました。再度メリットを受けられる状況となったわけです。
しかし、現政府では平成23年度税制改正で再度抜本的な改正を予定しているようですので、来年度ではこのメリットも再度消滅するかもしれません。
それから、親族への支払についてです。
個人事業では、同一生計の親族に支払う対価は、「専従者給与」等を除き認められていません。親族への経費計上という手法で所得分散されると適正な課税が行われなくなる、という事情に配慮したものです。これに対して、会社の場合には、この同一生計という概念がありませんので、支払い額が適正であればすべて費用として計上できます。
最後に、事業供用割合という件です。
個人事業では、事業と私用の区別が明確でないため、税務当局は常に「家計費の経費混入」がないかどうか、うるさいほど指摘します。本来、事業の経費ではない費用が事業経費に入り、事業所得を減少させていないか疑ってくるわけです。確かに、マイカーを事業用とプライベートのい両方で使用している場合が問題となります。それにかかる諸費用(ガソリン、車検代、自動車税、減価償却費など)を事業用割合という比率で按分し、事業用経費に計上します。事業用割合の合理性が検討されます。
これに対して、会社では事業供用割合という考え方はありませんので、会社名義での取引の全般は、原則会社経費として計上できます。
以上が、税金上の節税となるポイントでしょうか。
次に、税務上不利に働く点を考察します。
まず、交際費の限度額についてです。
個人事業では、交際費の限度規定はありません。全て費用計上できます。
会社の場合には、定額控除限度額(60万円)まで、交際費支出額の90%相当額についてのみ費用として認めるが、それ以上は費用として認められません。
交際費が多額な事業を行っている個人事業の場合、会社にすると税金がかかり、法人化がデメリットになりますね。
次に、住民税の均等割の話をしましよう。
これは地方税で一つで、会社に対して、利益があってもなくても、県および市町村(東京都では東京都)から課税されるものです。資本金と従業員数によって課税額が異なりますが、最低でも、7万円は必要となります。赤字でも税金納付が発生します。
最後に、決算の複雑化でしょうか。
個人事業と比べ、手続きが複雑で、作成する書類・提出する書類も大変多くなります。均等割以外の税金がなくても、納税申告書を毎年提出する必要があります。事務コストは
かなり増加します。自分でやる範囲は超えるので、専門家に任せた方が賢明でしょう。
以上です。
税金の観点から説明させていただきましたが、会社が得か否かは、決して税金だけの話ではないことを付け加えておきます。会社というものへの信頼度といいましょうか。個人事業の経験をされている方は、実感をもってご理解頂けると思います。
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